両親と生き別れ、鎌倉に暮らす3姉妹が父親の死をきかっけに腹違いの妹と一緒に生活をすることになり、1年間の暮らしを通して4姉妹が「家族」となっていく姿を描いたものです。
ズバリ見た感想は、、、。
うーーーん!リアル!心がほっこりしたり、ざわざわしたり、すごく沁みたり。声をあらげて感情をむき出しにするようなシーンもあるけれど、全体を通しておだやかで静かに展開していくというイメージ。例えば、様々な想いや怒りを持って生きてきた長女が腹違いの妹に「一緒に暮らさない?」と言う駅のホームでのシーン。見る側からするとドラマチックな展開を想像して電車に飛び乗るの?と思っていると、その期待を良い意味で裏切る。大きく揺れる感情を静かにみせる、日本人の特徴がリアルに表現されていると感じました。
もうひとつ日本人らしさを象徴するシーンだと思ったのは、綾瀬はるか演じる「幸(さち)」と広瀬すず演じる「すず」が鎌倉の海に向かって叫ぶシーン。2人はそれぞれ似たような事を叫ぶのだけど、その言葉にはそれぞれにある背景が凝縮されていて、日々表には出さない、変わらずずっとそこにある過去の出来事に対しての感情をぶちまる。鎌倉の海を通して、心に留まっているわだかまりのようなものを吐き出した2人の距離がぐっと縮まる瞬間でもあった。ところどころに、大胆さや言葉で伝える文化ではなく、慎ましく感情を露にしない日本の美徳が生み出すせつなさみたいなものを感じました。
物語と平行して垣間みせるそれぞれの立場、仕事、恋愛は、結果をみせないことでみる側の想像力を掻き立て、自分自身とシンクロさせて見ている人にとってはその先を考えさせられるというか、、、。社会でみせている自分の顔と実際はそうではない素の生活や恋愛の部分、自身の矛盾、ハッピーエンドばかりではない現実、それぞれの課題のようなものをリアルな空気感で感じさせる。
出口が無いと悩んでいる人や、自分自身を客観的に見て答えを出したい人、誰かを憎んで自分を苦しめている、そんな人達にぜひ見てもらいたい映画でした。自分だけの世界になってしまっていたいろんな事柄が、世の中に同じようにあって、この映画を通して客観的に自分の心の葛藤をみることで、少しづつ変化が起きるかもしれません。
個人的には大好きな三原の街と重なる部分(海や景色、食)と、憧れる部分(古い家に暮らし、庭でとれる梅でつくる梅酒が家族を結ぶひとつのモノだったり)をほっこりしながら楽しめました。田舎から出て働いている人には地元が恋しくなるシーンがたくさんあるかもしれませんね。
また、キャスティングもきっと話題になっているのだろうなという本当に豪華な顔ぶれでした。個人的には長澤まさみ演じる「佳乃(よしの)」がなんだかとてもリアルで身近な存在に感じ、吹き出してしまいそうになるセリフや仕草も多々。どの役柄も個性的だけど近くにいそうで、リアルな演技とセリフは、「ぐっとくる」ものだったり、心の中で「おるおる!こういう人!」と言わせるものでした。大きな感動、驚きというよりも、感じることが深くて見終わった後にいろんな感情に気づいたり冷静な判断に結びつく、そんな映画でした。
第68回 カンヌ国際映画祭(2015年)コンペティション部門出品
-家族を捨てた父が、のこしてくれた家族ー
海街diary 2015.6.13(土)全国公開
公式HP http://umimachi.gaga.ne.jp
製 作 年 2015年
製 作 国 日本
配 給 東宝、ギャガ
上映時間 126分
監督:是枝裕和
原作:吉田秋生 小学館コミック
脚本:是枝裕和
音楽:菅野よう子
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